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先輩移住者の声
先輩移住者の声 Voice of seniors.

移住者インタビュー

伝統の二俣和紙をアクセサリーに。
デザイナーとしていきいきと活躍
北 美貴さん
プロフィール
北 美貴(きた みき)
出身:
東京都生まれ
現住所:
金沢市長土塀
移住年:
平成26年(2014年)
職業:
デザイナー

金沢に移住した経緯を教えてください。

夫が金沢市出身で、「いずれは絶対地元に帰るって決めていたから」とUターンすることになったのがきっかけです。私は生まれも育ちも東京で、大学卒業後、都内の企業で働いているときに夫と出会い、結婚しました。夫も大学卒業後、15年ほど都内で働いていましたから、私はずっと東京で暮らすものだと思っていたんです。ですから、夫から金沢に戻ると言われたときは相当びっくりしましたね。

金沢にはどんな印象を持っていましたか。

結婚後、お正月やお盆、ゴールデンウィークには帰省していましたし、大学時代も友達と卒業旅行で金沢と能登を訪れていて、大好きな場所でした。ひがし茶屋街で散策したり、買い物したりしたのはすごく楽しい思い出です。ただ、移住するとなると話は別です。友達もいませんし、両親の住まいとも離れてしまいます。当時はフリーランスで空間デザインの仕事をしていたのですが、その仕事を続けていくことも難しそうで、不安しかなかったですね。

実際に暮らしてみていかがでしたか。

平成26年(2014年)3月に引っ越した際、東京から車で金沢に向かい、到着したのが夜11時頃でした。ものすごく寒い日で、雪も降ってきて。今思えば金沢でも滅多にないほどの寒い日だったのですが、すごい所に来てしまったとますます不安が募りました。
とはいっても最初の一カ月は楽しくてしょうがなかったんです。観光客気分であちこちに出かけて、おいしいものもたくさん食べましたから。でも生活が落ち着いてくると、知り合いがいない上、車がなかったこともあって家に閉じこもりがちになってしまいました。
私のことを気に掛けて、スーパーなどで「どこからきたの?」と話しかけてくれる人もいたのですが、逆に「よそもの」と言われているようで、放っておいてほしいという気分でいっぱいでした。

そういった気分が解消されるきっかけは何でしたか。

東京にいた頃、プロダクトデザインに取り組んでいて展示会などに出展することがありました。そんなときに知り合った金沢の職人さんなどが連絡をくれて、私を引っ張り出してくれたのです。そこからどんどん世界が広がっていきましたね。

現在は金沢の中心市街地にお住まいです。住み心地はいかがですか。

住みやすくて楽しい場所だと思います。すぐそばには土塀と石畳の路地が続く長町武家屋敷跡があって、情緒のある雰囲気も味わえます。金沢駅や夫の実家にも歩いていけるので便利です。私には二人の子どもがいるのですが、近所の方は少しでも気になることがあれば声を掛けてくれるなどしてくれて、安心して暮らせる環境です。

東京と比べて良かったことはありますか。

いろんなイベントに参加しやすいと感じています。もちろん、イベントの数そのものは東京の方が多いのですが、多すぎて把握しきれないのです。行きたいイベントがあっても、会場が遠かったり…。その点、金沢ではさまざまなイベントの量も適度で情報を把握しやすいですし、街のサイズ感もコンパクトですから参加しやすい感じがします。実際、子どもたちとナイトミュージアムやプロジェクションマッピングのイベントなどに出かけて楽しんでいます。

ライフスタイルに変化はありましたか。

一番大きな変化は車ですね。移住当初は駐車場に車を入れられないほどでしたが、今では運転にも慣れました。中心市街地では車に乗らない人もたくさんいますが、やはり車があると便利で行動範囲も広がります。
それと、金沢ではキャンプやスキー、釣りなど、アウトドアレジャーを楽しむ人が多いと感じます。入念に計画を立てて泊まりで行かなくても、思い立ったときにすぐ行ける環境があるからでしょうね。私自身も自ら企画するほどではありませんが、誘われればバーベキューなどを楽しんでいます。

ところで、現在は金沢の希少伝統工芸「二俣和紙」を使ったアクセサリーのデザイン、制作を手がけています。きっかけは何でしたか。

東京で知り合った金沢の職人さんの橋渡しで、地元のデザイナーさんや職人さんが所属するユニットに入れていただきました。そのユニットで東京デザインウィークにショップを構えてプロダクトを販売する機会があり、私も試作品を作ろうとしたところ、偶然にも和紙に樹脂を染み込ませた繊細で透き通った素材が出来上がったのです。この素材を生かすためにアクセサリーを作ることにしたのです。デザインウィークではピアス20個を販売し、19個が売れました。それで手応えを感じて本格的に取り組むようになりました。

二俣和紙との出会いは?

当初は二俣和紙ではなかったのですが、ある金工作家さんに誘われて銀座三越の物産展に出展した際、金沢の希少伝統工芸品を販売するショップの方と知り合って、二俣和紙の職人さんを紹介していただきました。その後、金沢で活動する染織作家さんともつながりができ、一部の商品では染めをお願いしています。
今では自分のブランドだけでなく、優しいパステルカラーの漆器をデザインするなど、地元の伝統工芸とのコラボレーションにも取り組んでいます。金沢にはものづくりに取り組む方が大勢いますし、やりたいと思ったらサポートしてくれる環境が整っていると感じますね。

今後の抱負を聞かせてください。

二俣和紙を使ったアクセサリーでは今後、海外展開を目指しています。今はニューヨークのチャレンジショップでテスト販売をしています。また、金沢にはたくさんの伝統工芸がありますから、それらに自分なりのアイデアを加えて新しい商品を作ってみたいと考えています。

最後に移住を検討している方にメッセージをお願いします。

東京に住んでいたときは常に食品の産地や添加物などをチェックして買い物をしていましたが、金沢では新鮮でおいしくて、安全・安心なものが豊富にあり、安く手に入るのがうれしいですね。子どもにも安心して食べさせられるので助かっています。醤油や味噌もできるだけ地元産を選んで購入し、自分好みの味を見つけていくのも楽しかったです。ですから、食に関心のある方には特におすすめできる場所だと思います。
また、ものづくりをすることに対して理解し、応援してくれる土壌があります。周りのデザイナーや作家さん、金沢という環境からの刺激もたくさんあり、ここだから出来るものづくりがあると考えています。とてもやりがいを感じる住みやすい場所だと思います。

北美貴さんの作品やアクセサリー、お仕事を紹介するサイトはこちら
「Jul / ユール」
http://www.jul.jp/

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